「聖夜の灯、消えない想い」

 

 降り積もる雪の中、乾いた足音が響く。

 かつて聖夜の日に訪れた、とある家の前。飾られている灯りを眺めていた望美の
傍らに、敦盛は寄り添った。

 「望美、ここにいたのだな」

 「はい、あの綺麗な灯りが忘れられなくて」

 灯りの方向に視線を移す。煌めく星のように美しく、心に温もりを灯す、優しい灯り。
それは、以前二人で見た時と何一つ変わっていない。

 あの日から、季節が一つ巡った。今日は、聖なる夜の日だから。

 「そうだな」

 肩に寄り掛かるようにして、望美の頭が触れる。心地よい重みを感じながら、頷いた。

 絹糸を思わせる髪を、手でゆっくりと撫でる。

 こうして共に「生きて」、失われぬ温かさがここにある。それが、敦盛には幸せだった。

 あの美しい灯りに手が届かなくても、せめて温もりを、望美に伝えたくて。

 敦盛は望美の肩に手を伸ばし、そっと抱き寄せた。

 「ん……」

 「このまま、側にいさせてくれ」

 胸に顔を埋め、望美が頷く。

 「温かい」

 夜空から、雪が幾重にも舞い落ちる。淡く儚いそれは、二人を祝福するかのように。

 清らかで美しい、穢れなき白。

 ――あなたに、似ているな。

 ただ違う事がある。望美は――

 この穢れた身を温かく包んでくれた。あなたの鼓動を、温もりを感じる。

 望美が、ゆっくりと顔を上げた。

 「敦盛さん……大好き」

 胸の深い深い場所で、その言葉が響いていた。

 「消えないで「生きて」てくれるから、私は幸せです」

 遠い、いつか。やがてはあの灯りが消えてしまうように。この身も、同じ運命だと知っている。

 ――けれど想いは、温もりは、消えはしない。だから、自分はここにいる。

 「ああ。私も、あなたが好きだ」

 言葉は、それだけでよかった。静かに、顔を近付けて。

 望美の唇に、自分の唇を重ねる。消えぬ想いが、少しでも届くように。

 柔らかな唇から伝わる熱が、温かい。

 どうか、この幸せが続いて欲しい。敦盛はそっと、胸の内で祈った。


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