「重なる手、寄り添う心」

 

 褥に寄り添う望美の手に、敦盛は自分の手を重ねた。

 柔らかく温かい手が、握り返してくる。

 「敦盛さん、寝なくていいんですか」

 「私は、大丈夫だ。先に眠っていてくれ」

 望美が眠りにつくまで、見守っていたかった。

 「敦盛さんが目を閉じるまで起きてます。一緒に寝た方が、いい初夢が見られると思うから」

 悪戯っぽく、くすりと微笑む望美。

 ――あなたには、敵わないな。

 確かに今日は睦月の一日だ。けれどそう言われても、すぐに目を閉じる事など出来なかった。

 吐息が聞こえる程の静寂。敦盛は望美の手を握ったまま、その瞳を見つめる。

 澄んだ緑色の瞳が、横たわる自分と息がかかりそうに近く、胸が高鳴るのを感じた。

 すでにこの身に宝玉はない。それでも、もう二度と離れぬように触れていたくて。

 「苦しくないのは……望美が、私の痛みや渇きを満たしてくれたからだ。穢れたこの身でも、
側にいたいと願ってしまう」

 望美の手が、鎖の付いた手を包む。優しく触れる温もりは、浄化の力を振るう事がなくなっても
変わらなかった。

 「私は、ちゃんとここにいます。敦盛さんも、同じですよ」

 望美は重ねた手を、敦盛の心臓の上へ押し当てた。

 温かく脈打つ鼓動。それが怨霊の身には、仮初めにすぎぬという事など、とうに敦盛は知っていた
はずだった。けれど――

 触れる手から伝わる望美の体温。自分が今ここにいるという証は、同じなのだから。

 「望美、私はこの世に留まってよかった」

 敦盛は望美の方へ身を近付け、空いた手でその肩を抱き寄せた。

 夜着を通して、互いの鼓動が触れ合う。体の内に望美の魂がここにいるという事を、確かに感じる。

 「ん……」

 微笑む望美の柔らかな唇に、自分の唇を重ね――そっと離した。

 「敦盛さん……夢の中でも、一緒……」

 胸に頬を寄せ、望美がゆっくりと目をつむる。それを追うようにして、目を閉じた。


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