「子猫との共通点」

 

 望美の部屋で座りながら、敦盛は床に置かれたダンボール箱へ視線を移した。

 一匹の小さな三毛猫が、仰向けのまま幸せそうな顔で眠る姿。

 その愛らしさに、かすかに微笑みが浮かぶ。

 昨日図書館の前に捨てられていたこの猫を、望美が拾ったというわけだ。名前はまだない。

 「可愛いですね」

 隣で猫の喉を優しく撫でていた望美が呟いた。

 「そうだな」

 ふと、敦盛は猫と自分の共通点に気付く。

 ――独りだったが、あなたに救われた。

 かつて、怨霊には許される場所などないと言った事があった。

 

 “それは違います。私は……敦盛さんの居場所になりたい”

 

 穢れた身を愛してくれた、望美の笑顔が脳裏をよぎる。

 それが、雪が降る中この猫を拾った時と重なり、胸が温かくなるのがわかった。

 ――お前も、幸せなのだな。

 伸びをする猫の腹を、そっと撫でる。

 もう一つ、思う事があった。平家一門で猫を飼っていた頃、皆に聞いた話だ。

 猫は気を許した者の前でしか、無防備な姿を見せないという。

 傷付けたくないから、深く触れられることを恐れていたけれど、望美になら。

 敦盛は猫を優しげに見つめる望美の肩へと、ゆっくりと寄り掛かる。

 「敦盛さん?」

 望美が頬を赤く染め、顔をこちらに向けた。

 「すまない。しばらくこうしていても、よいだろうか」

 今だけは、幼子のように甘えていたいと願ってしまう。

 望美は何も言わずに微笑むと、頬を寄せてきた。

 頬や髪に伝わる、ほのかな熱が心地よい。

 敦盛は望美の背中に手を回し、腕に力を込める。

 懐かしさを感じる、優しい抱擁に身を委ねた。


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