「Sweet White Day」

 

 「望美、これを」

 自室のベッドに仰向けに寝転がる望美の傍らで。

 敦盛はクッキーが入った長方形の白い缶を、すっと差し出した。

 望美が自分の方へ体を向けて、缶の蓋を開ける。

 チョコレート、レーズンにレモン。かすかに漂う甘い匂いに、望美は小さく感嘆の声をあげた。

 「美味しそう」

 「「バレンタイン」の返礼だ。あなたに贈り物をもらって、今日でちょうど一月になるから」

 「そっか、もうホワイトデーなんですね。ありがとうございます」

 ふわりと、澄んだ微笑みを返す望美。チョコレートクッキーに伸ばそうとした白い指先に、
敦盛は手を添えた。

 「感謝しているのは……私も同じだ。あなたがいるから、私は「生きて」いける」

 ありがとう――かつて恋文で、同じ言葉を届けた覚えがある。

 あの時はただ一言だけだったけれど。今こうして、愛しさを伝える事が許される。
それだけで、幸せだ。

 望美が静かに頷いて、優しげに笑った。

 チョコレートクッキーを一口大に指でちぎり、敦盛は望美の口元へ運ぶ。柔らかな唇が、
指先に触れた。

 「美味しい……。ねえ、敦盛さん。「ありがとう」と同じくらい、大切な言葉ってわかりますか?」

 悪戯っぽく、試すように望美が言う。

 「そうだな、私が思うのは――」

 謎掛けにも似た言葉の答えを、望美の頬に唇を寄せ、ささやいた。

 「それはきっと、「好き」だ」

 「正解です」

 ほのかに熱を帯びた頬に、唇に、敦盛は優しく口付ける。

 淡く溶けるような、甘い温もりを感じていた。


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