「絡めた指先」

 

 「ねえ敦盛さん。今の私には、白龍の逆鱗で過去を遡る事は出来ないけど……。
敦盛さんが失くしたものを今からでも取りに行けるって、勝手に思ってていい?」

 クリスマスイヴの夜。望美が自室のベッドに横たわりながら、側で手を握る敦盛に
くすりと微笑んだ。

 望美が見つめる先は、明かりを消した室内で机上に儚く輝く、ミニチュアのクリスマスツリー。

 そっと絡められた望美の冷えた指先に触れただけで、微かな痛みが伝わってきた。

 ――あなたも知っているだろう。私は追憶ではなく、その優しさに触れられる今が欲しいと。

 「そうだな。だが私が失った温もりは、ここにある」

 冷たい指先と手の甲を吐息で温め――ゆっくりと顔を近づけて、唇を重ねる。

 「よかった……」

 掠れた声。胸の奥の奥に、心地よい疼きが走った。

 自分がよく知る獣の姿に転ずる痛みとは違う。痛くて痛くてたまらなくても、このまま
抱き締めていたいと思えるような。

 「浄化の力ではなくても望美がくれた、温かい光だ。願わくば……永劫に触れる事を、
許してくれ」

 望美が握った敦盛の手を、祈るようにして押し頂く。

 「はい」

 頷き、手の甲と指先に落とした口付けがその答えだった。

 愛しげに何度も唇を重ね合った時、望美がぴくりと身を震わせた。

 「そんなに優しく触れないで……私も何も、もう壊れたりなんかしないから」

 「ああ」

 安らかな、どこかオカリナにも似た寝息を立てた望美にそっと微笑み、小さく小さく
唇を重ねる。望美の手を握り締めたまま、ベッドに突っ伏すようにして敦盛は
目を閉じた。

 ――夢の中にもクリスマスの灯りを連れて行こう、と望美の声が聞こえる。
どうか、このまま共に。


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